6月13日、デンバーのボール・アリーナで行われたNBAファイナル2023の第5戦、デンバー・ナゲッツ対マイアミ・ヒートの一戦は94-89でナゲッツが勝利し、シリーズ4勝1敗で球団初の優勝を果たした。今回は歴史的なシリーズとなった今シーズンの最終決戦を振り返る。
ナゲッツ対ヒートのファイナル結果|2022-23シーズン
・第1戦:ナゲッツ 104-93 ヒート
・第2戦:ナゲッツ 108-111 ヒート
・第3戦:ヒート 94-109 ナゲッツ
・第4戦:ヒート 95-108 ナゲッツ
・第5戦:ナゲッツ 94-89 ヒート
試合のキーポイント
ロースコアとエースの勝ち切る力
今シーズンのNBAファイナルは非常にロースコアな試合展開だった。レギュラーシーズンで圧倒的な破壊力を示したナゲッツもやはりヒート守備の前には苦戦、一見すると2000年代までのスコアのようである。攻撃のナゲッツと守備のヒートという構図を考えれば、ヒートの得意な形に持ち込んだと言えるのだろうが、そうならないのが勝負の舞台。
勝敗を分けたのはチームの完成度以上に、個人の出来が大きく関わった。プレーオフでの主力選手は48分の試合で40分近いプレータイムを得ることになる。バスケットボールはチームスポーツだが、主力の2,3人がどこまで圧倒できるかが短期決戦では必要になるわけだ。今シーズンのジミー・バトラーがそれを証明してきたわけだが、流石に20試合をこなす頃には息切れは必至。今シーズンのプレーオフ平均は26.9得点、フィールドゴール成功率は46.8%を記録したが、NBAファイナルでは平均21.6得点、フィールドゴール成功率は41.3%に留まっている。
一方のナゲッツはニコラ・ヨキッチが平均30.2得点、ジャマール・マレーが平均21.4得点を記録し、ダブルエースで50点以上をヒート戦ではマーク。アシストも含めればヨキッチが平均7.2アシスト、マレーに至っては10.0アシストを記録しており、ザックリとした計算でチームのおよそ80%の得点をクリエイトしている。
レギュラーシーズンからは鳴りを潜めたナゲッツのオフェンスではあるが、活躍すべき選手が結果を残したのが大きいだろう。特に最大7戦の短期決戦であれば、その影響力は更に響いてくる。
スリーポイントとインサイド
ポストシーズンのヒートはスリーポイントの出来で勝ち上がってきた。それは本来彼らが得意とするものではなく、絶対的な状況下で突発的に生じたアドレナリンのようだと感じる。これまでサプライズ過ぎた結果はレギュラーシーズンと同等のスリーポイント成功率34.3%へと減少、40%近くあったフィーバータイムも終わりを迎えてしまった。
そしてもう一つのキーポイントはインサイドの攻防だ。機動力に優れるバム・アデバヨはニコラ・ヨキッチとの勝負でも優位に立つ場面があり、ウイングとのマッチアップではミスマッチを生み出した。しかし、アデバヨ以外のマッチアップではナゲッツにかなり分があった。特にフロントコートはリーグ屈指のフィジカルチームであり、同様にフィジカルチームであるレイカーズに競り勝ったのは伊達ではない。リバウンド数はおよそ10本の差をつけて圧倒。地味ではあるがゲームを支配していたのはナゲッツだった。
キープレイヤー
ニコラ・ヨキッチ(ナゲッツ)
レギュラーシーズンのMVPこそ取り逃がしたが、今シーズンのヨキッチは神懸っていた(今シーズン「も」だが…)レギュラーシーズンで圧倒的なスタッツを披露しながら、プレーオフ平均でも30.0得点、13.5リバウンド、9.5アシストでほぼトリプルダブルの活躍。ヒート戦では平均30.2得点、14.0リバウンド、7.2アシスト、フィールドゴール成功率は58.3%と無双状態。
相棒のマレーも素晴らしいのだが、常に安定した活躍が出来るヨキッチはチームの柱としてナゲッツを牽引してきた。ここ最近のナゲッツは非常に強いという評価をされているだろうが、ヨキッチという存在がそのようなブランド向上に起因している。
対面するアデバヨには多くの得点を許したが、取られても取り返せるマインドはナゲッツというチームの強さを再認識。リーグ随一のオフェンスチームなのも納得と言える出来だった。
バム・アデバヨ(ヒート)
エースのジミー・バトラー以上に目立ったのはアデバヨの活躍だった。マッチアップするヨキッチを抑えることには苦労したが、その分オフェンスやリバウンドで存在感を発揮。プレーオフ平均の17.9得点、9.9リバウンドから平均21.8得点、12.4リバウンドをナゲッツ戦では記録。およそ120%の活躍を大舞台で披露した。
ナゲッツのダブルエースが平均50得点を記録していることを考えると、もう少しばかり得点を期待してしまうかもしれない。しかし、ヒートは他にもバトラーやタイラー・ヒーローらがいる。ナゲッツのような圧倒的な個よりは控えめかもしれないが、チーム全体のレベルアップでこの舞台に再び戻ってくることを期待したい。
今シーズンを終えた2チーム
デンバー・ナゲッツ
マイケル・マローンHCは次のステップとして王朝を狙っているが、現実味のある話かもしれない。主力選手は軒並み残留し、2024-25シーズンまでは恐らく安泰だ。渋い活躍をしたブルース・ブラウンがプレイヤーオプションのため、ロールプレイヤーの入れ替わりはあるかもしれない。
敢えて懸念点を挙げるのであれば、主力選手の契約は大型かつ長期にわたって継続する。仮にトレードに動きたい状態でも身動きがしにくい状況だ。今後チームがうまくいかないことがあれば再編に苦労するだろうが、今後も安定した戦いぶりを見せてくれるはず。
マイアミ・ヒート
ヒートのオフシーズンは慌ただしくなりそうだ。ゲイブ・ヴィンセントやマックス・ストゥルースといった重要なロールプレイヤーの契約が終了となる。ヒートはチームで点を稼ぐ傾向にあるため、コアメンバーの放出は非常に痛い。ロールプレイヤーの慰留や確保が必要なオフシーズンになるはずだ。
それでもレギュラーシーズンで苦戦したチームもプレーオフでは輝きを見せた。あのポテンシャルを見ては、来シーズンはレギュラーシーズンからエンジンがかかることを期待したいし、それが出来るチームでもあるだろう。