今シーズンのNBAも長き戦いを経て、遂にNBAファイナルへと突入した。対戦カードは圧倒的な成績で勝ち上がってきた西のデンバー・ナゲッツ、第8シードからの快進撃を見せたマイアミ・ヒート。全く対照的なチーム同士の最終シリーズをプレビューしていく。
ナゲッツとヒートの勝ち上がり
ウェスタン・カンファレンスで首位を獲得した勢いそのままに、プレーオフでも快進撃を続けているデンバー・ナゲッツ。カンファレンスファイナルのロサンゼルス・レイカーズ戦でも安定した力を披露してスイープ勝ちを収めた。
この完璧なチームの最大の欠点は主力の負傷欠場だが、今シーズンは全員が健康的で隙が無い。昨シーズンを全休したジャマール・マレーはポストシーズンでギアを上げており、マイケル・ポーターJrも健康的なシーズンを過ごしている。MVPの受賞こそ逃したが、文句のつけようがないニコラ・ヨキッチの活躍も健在だ。
そんなパーフェクトチームを迎え撃つのがNBA屈指のスペシャリスト部隊であるヒート。優勝を経験し、経験豊富なエリック・スポールストラHCの元、ジミー・バトラーという闘将が牽引する。
ヒートはアウトサイドショットのような華麗さは少ないが、持ち前のヒートカルチャーで泥臭くも勝利をもぎ取る。バトラーを筆頭にバム・アデバヨ、カイル・ラウリーといった主力も体を張ったフィジカルプレーが得意だ。下位シードながらここまで上り詰めたのも頷けるようなチームと言えるかもしれない。
2022-2023シーズンのレギュラーシーズン成績
・2022年9月10日:ヒート 96-113 ナゲッツ
・2022年10月1日:ナゲッツ 120-111 ヒート
・2022年1月1日:ヒート 119-124 ナゲッツ
・2023年2月15日:ナゲッツ 112-108 ヒート
レギュラーシーズンでの対戦はナゲッツが4戦全勝。
過去10試合を遡っても9戦をナゲッツが制している。
試合の注目ポイント
西高東低
NBAはウェスタン・カンファレンスが強く、イースタン・カンファレンスはその後塵を拝すと言われてきた。最近はその傾向も弱くなってきたが、今シーズンは再び西チームの強さを印象付けるシーズンだと感じる。何せ圧倒的なナゲッツすらもレギュラーシーズンは53勝にとどまっており、勝率60%以上を超えるチームはカンファレンス内に2チームしかいなかった。
それでもポストシーズンに照準を合わせ、12勝3敗でNBAファイナルまで勝ち進んでいる。
データに基づいた考察をする前にやや主観的な感情から入るのだが、その猛者ぞろいのウエストをポストシーズンで圧倒するナゲッツの強さは抜け出ているように思う。
一方イーストの不調ぶりを表すのは、レギュラーシーズンで好成績を収めたミルウォーキー・バックスが早々に脱落し、それに次ぐセルティックスもなかなか勝ちきれないシリーズが続いたことだ。強いであろうチームがポストシーズンに苦戦してしまうのは、カンファレンス内でその地位を確立出来ていないことにある。ヒートがポストシーズンで全くの別チームに見えるほどのパフォーマンスを見せているのは確かだが、サプライズが起きるということは本当に抜きん出たチームがいないことの裏返しともいえるだろう。
だからこそレギュラーシーズンで1位を獲得し、ポストシーズンでも同等のプレーを見せることが出来るナゲッツの完成度は改めて高レベルだと認識できる。
フィジカル対決とスリーポイント
ナゲッツとヒートのスタイルは非常に酷似している。というのも両チームのセンターがゲームメイク可能であり、ピック&ロールを得意としているからだ。ヨキッチは言うまでもなくポイントセンターだが、アデバヨもハイポストでオフェンスの組み立てに参加している。形こそ違えど、センタープレイヤーを介したオフェンスプレーを採用している。
そして、ロスターで共通するのは特徴は違えどフィジカルに優れたプレイヤーが多いことだ。ナゲッツはサイズに優れ、ヨキッチからのパスでペイントアタックを行うことが多く、
ヒートは小柄なプレイヤーが多いが横に厚みを持つ体感に優れた選手が多い。こちらもバトラーを筆頭にミッドレンジやペイントで勝負を仕掛けるプレーが多くを占めている。簡単に言ってしまえば、スリーポイントよりもインサイド勝負をする傾向が強いわけだ。
となると如何にインサイドを制するかがカギとなるわけだが、そこはナゲッツに軍配が上がるだろう。リーグ屈指のフィジカルチームであるレイカーズを下したナゲッツはヒート戦への予行練習は万全。ロスターのサイズを活かしてリバウンド勝負でも優位に立ちそうだ。
ヒートとしては非常に苦しいシリーズとなりそうだが、直近のヒートは1つの光明を見出している。それが圧倒的なスリーポイントの確率である。レギュラーシーズンは確率が悪くオフェンスの停滞に繋がっていたが、ポストシーズンは圧巻の39.0%を記録。セルティックスのお株を奪うかのような効率で得点を重ねてきた。インサイド勝負が厳しいのであればスリーポイントを…という発想になるだろうが、今のヒートは強気に出れるだけの上昇気流に乗っている。
ナゲッツはインサイドを徹底的に攻めてくるだろうが、ヒートがこれまで同様にスリーポイントを決め切ることが出来れば、シリーズを互角まで引き込む可能性はあるかもしれない。
キープレイヤー
ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ(ナゲッツ)
ヨキッチでもマレーでもないKCPを選定。ヒートディフェンスの代表例として2-3ゾーンがある。インサイドを主軸に攻めるナゲッツ対策として必ず発動するだろうし、その攻略は必須条件。
主力選手の中ではコールドウェル・ポープのオープンショット機会が増えそうで、的確に沈めることが求められる。今シーズンのプレーオフは41.1%のスリーポイント成功率で十分期待には応えられそうではある。
もちろん好調ケイレブ・マーティンへのマッチアップやエースのバトラーをディフェンスするはずであり、攻守両面で幅広い活躍を見てみたい。
ダンカン・ロビンソン(ヒート)
プレーオフジミーを目の当たりにすればジミー・バトラーを上げるべきだろうが、あまりにも安直すぎるので今回はスルー。ナゲッツに一泡吹かせるためにスリーポイントという武器は必須事項であり、ロビンソンはそのメインウエポンとなる。
レギュラーシーズンは調子が上がらなかったが、ポストシーズンで復調しており、セルティックス戦では48.4%を決めている。また、スリーポイントを囮にしたドライブも披露しており、プレーの幅が広がってきた印象だ。
セルティックス戦ではマーティンがそうだったようにエックスファクターの台頭が求められる。ナゲッツ戦ではこのスリーポイントシューターに期待してみたい。
結果予想
ナゲッツの勝利
ナゲッツ4:ヒート1
数々のドラマを生み出したヒートではあるが、今シーズンのナゲッツはあまりにも絶対的すぎる存在。
ナゲッツオフェンスのシャットアウト、スリーポイントの確率維持、あらゆる条件をクリアしない限りヒートは苦しいシリーズになりそう。