1月24日、ワシントン・ウィザーズとロサンゼルス・レイカーズでトレードが成立。八村塁がレイカーズ、ケンドリック・ナンとドラフト2巡目指名権3本がウィザーズへそれぞれ動くこととなった。
噂段階ではウェスタン・カンファレンスの強豪が獲得に乗り出しているとのことだったが、
最終的に西の名門レイカーズ入りとして着地した。
今回はこのトレードを色々名角度から分析しつつ、今後八村に期待されるであろう役割を考えていこう。
トレードの勝者
そもそも今回のトレードについて、個人的にはレイカーズ優位の結果のように感じる。将来の有望株を放出し、2巡目指名権を獲得したウィザーズの狙いは良くわからない…
確かにここ最近の2巡目指名権は価値が高く、選手の厚みは将来的に増してくるだろう。フォワードもやや飽和気味だったため、ロスターの整理を行った形だが、来シーズン以降に不安があるように思う。
今のフロントコートの軸はデニ・アブディヤ、カイル・クーズマ、クリスタプス・ポルジンギスだが、今シーズン終了後にクーズマとポルジンギスの契約が切れる。絶賛売り出し中で引く手あまたのクーズマ退団は濃厚だと思うし、高サラリーのポルジンギスは残留の可能性もありつつ、プレイヤーオプションの破棄も考えられる。
そうなると潤沢なフロントコートはほとんどが抜けることになる。八村の放出は最低限クーズマを残留させた後でも良かったかもしれない。
レイカーズとしては2巡目指名権を失うことになったが、八村を加えることになった。将来のスター候補にもなりえるし、大成しなくとも優秀なロールプレイヤーとして期待できる。
指名権を持たなくとも、オースティン・リーブスのようにドラフト外から優秀な選手を発掘できるレイカーズにとっては、十分な結果と言えるのではないだろうか。
求められる役割
メディアで報じられる八村のニーズはアウトサイドショットとして挙げられている。34%を切るスリーポイント成功率はリーグでも下位で、インサイドを主戦場とするプレイヤーが多く在籍。その改善として八村に白羽の矢が立ったわけだ。
ただし、八村本人はスリーポイントをウリとしているわけではないのは少々気がかりでもある。昨シーズンこそ44.7%と高確率で沈めてきたが、今シーズンは30%前半と伸び悩み。元々ミッドレンジを得意とするスタイルのため、どちらかというとチーム全体のスタイルと類似している。
昨今のスリーポイントを主体とするオフェンスにおいて、サンアントニオ・スパーズと並び、リーグでも下位のスリーポイントアテンプトを記録するレイカーズ。そのため、表面上はアウトサイドショットの枚数を増やす見方が強いが、そのスタイルに則ってツーポイントで勝負するのが一番ではないかと思う。
高確率のツーポイントの有用性はデマー・デローザンやクリス・ポールが証明しているし、
今シーズン好調のニューオーリンズ・ペリカンズやデンバーナゲッツに関しては、レイカーズよりもツーポイントでオフェンスを組み立てる傾向にある。
NBAはバスケットボールのスペシャリストが集う舞台だ。今の八村に求められる役割は「球団から求められる役割」ではなく、「自分自身が得意とする武器を披露する」ことにあるかもしれない。
周囲が期待する役割ではないかもしれないが、チームにはレブロン・ジェームズやラッセル・ウェストブルックといったプレーメイカーが多く在籍する。彼らのサポートを受け、自らが得意とするミッドレンジという絶対の武器を披露することが、未完の大器とされる才能を発揮してくれるかもしれない。
向上したいスキル
八村はカワイ・レナードとも比較される選手だ。ミッドレンジショットと体格がその理由だが、現時点での違いはディフェンス力にあるだろう。
八村のポジションはスモールフォワード、パワーフォワードの両方をこなす万能フォワードというイメージが強いが、実はディフェンス面では扱いが難しいという論調がある。スモールフォワードではクイックネス、パワーフォワードではフィジカルの不足が指摘されている要素だ。
ウィザーズには万能タイプのクーズマがおり、マッチアップに苦労はなかったが、特にデニ・アブディヤと組むとラインナップの難しさが現れる。アブディヤは決してディフェンスに定評のあるプレイヤーではないため、フォワードの守備に苦労していたわけだ。
そして、移籍後のレイカーズでは恐らくレブロンとアンソニー・デイビスとフォワードのタッグを組むことになる。両者ともにオフェンスの軸を担うため、八村には守備での貢献がより必要になってくるわけで、攻守万能なプレイヤーとしての成長が重要となる。
総合的に考えると非常に責任のある役割が求められるわけだが、もともと期待されていたオールラウンドフォワードとしての立ち位置を是非築き上げて欲しいものだ。
今後
2019年のNBAドラフト組である八村は今シーズン終了後に制限付きフリーエージェント(FA)となる。大型の契約延長がかかるシーズンを迎えたわけだが、今回のトレードはレイカーズが契約に前向きな姿勢だと窺える。指名権を複数放出してでも取りに来たのは、その意識の表れだろう。
現地メディアからも契約延長を示唆する記事も公開されており、今後数年に渡って構想に入っている可能性が高いのは嬉しい限りだ。
良くも悪くも節目のシーズンと言える今シーズン、今回のトレードがキャリアを大きく進める一歩になることを期待して、日本が誇る侍の活躍に注目してきたい。