2022-23シーズンのNBA開幕まで1か月を切り、各チームのロスター補強もある程度終わりを迎えた頃だろう。
今回はイースタン・カンファレンスに所属する全15チームのロスター・戦術・課題を解説し、今シーズンの戦力分析をしていこうと思う。
※文中記載スタッツはレギュラーシーズンの内容がメイン(プレーオフの場合は注釈あり)
ボストン・セルティックス
ロスター
HC:イーメイ・ユドーカ
戦術/強み/今シーズンの所感
ユドーカ就任後から強化している「チームプレイ」が今シーズンも軸となるはずだろう。昨シーズン序盤こそ噛み合わなかった連携もシーズンが進む毎に改善を見せ、終わってみればNBAファイナルまで駒を進める結果となった。
オフェンスではテイタムやブラウンといったエース格でもフリーの味方へパス出しを行い、ボールムーブメントを意識。フリーでのシュートアテンプトが確率の良いFG%を生み出すことへ繋がっている。
それ以上に際立つのが昨シーズン1位の堅守を誇ったディフェンスであり、その組織的な守備はこのセルティックスというチームを語るうえで欠かせないだろう。
昨シーズンの最優秀守備選手となったスマートを筆頭にブラウンやウイリアムズと個々人でも十分なディフェンス力を誇るが、注目すべきはカバーリング能力にある。
ボールハンドラーとは別のマークについている選手でも、常にハンドラーの動きを気にしており、ドライブで侵入してくる際には疑似ダブルチームのようなカバーリングを見せる。ヘルプに入るとフリーの選手が当然生まれてしまうが、それを感じさせる前にスライドを行っており、オフェンスのスペースを与える場面は少ない。
その徹底した守備体系に加え、ハッスルプレーを信条とする選手が多いため、フルタイムでハードディフェンスを行う点もかなりのプレッシャーになることだろう。
まさに攻守両面で連携が際立つロスターへと変貌を遂げており、オフにはブログドンを獲得するなど豪華メンバーに更なるアップデートが加わった。
よほどのことが無い限りは優勝の最有力であり、躓くことは考えにくい。
課題/懸念点
突然のニュースに驚いたが、ユドーカHCの活動停止がチームに悪影響を与えないことを祈るばかりだ。昨シーズンの段階でチームの枠組みは完成しているため、暫定HCという状況でも十分な成績は期待できるが、少なからず選手は影響を受けるだろう。
今となってはジャズのHCに就任したウィル・ハーディー(昨シーズンまでセルティックスのACを務めた)の放出が悔やまれる。
それでも今シーズンの優勝大本命であり、ロスターの質にも隙は無いのだが、他に懸念点を挙げると「大舞台での二大エース一人相撲」かと思う。
先述したようにチームで連携する点が強みだが、重要な試合でテイタムとブラウンが強引なペネトレイトでボールロストする場面がいくらか見られた。無理なドライブによるターンオーバーは直接失点に繋がっており、そこから流れが変わることも少なくない。
自分自身の制御が出来れば、また一つ成長を遂げられる伸びしろは残されている。
注目選手
マルコム・ブログドン
パスムーブを得意とするセルティックスにも合致しそうで、昨シーズンまでのロスターとはまた違ったプレイメイクが期待出来る。
自身のスコアリング能力ももちろん高く、第3のスコアラーとしてテイタム、ブラウンの負担を軽減できそうだ。2大エースのオフェンスが停滞した際に活路を見出す活躍をして欲しい。
ブルックリン・ネッツ
ロスター
HC:スティーブ・ナッシュ
戦術/強み/今シーズンの所感
リーグ随一のタレント力を誇る圧倒的な攻撃力が最大の魅力と言えるだろう。
プレーオフのような大舞台でもその破壊力は衰えを知らず、むしろレギュラーシーズンの113得点から115得点へとアップしており、相手が強力なほど鋭さを増している。
個人技主体のオフェンスと思いきやアシスト%はリーグ中位の60.2%とそこまで低くなく、あのセルティックスと比較しても0.7%しか変わらない。
圧倒的な個人能力を持つアービングとデュラントを軸としつつも、フリーな味方へパスを捌く効率的なショットが基本的な戦術だ。実際レギュラーシーズンのFG%は47.5%とリーグ4位の好成績。2大エースに自由を与えながら、シューターを揃える布陣が特徴のロスターと言えるだろう。
また、今シーズンはシモンズの復帰が予定されており、課題としているディフェンス力の改善に繋がりそうだ。以前から守備力を課題としていただけに、ウィークポイントの解消はやや不安定な昨シーズンとは違った結果になるはず。
課題/懸念点
失点が抑えられないチームは勝てないと言われているNBA。昨シーズンのプレーオフではその弱点を完全に露呈した形になったが、今シーズンはシモンズの復帰やオニール、モリスらの加入でカバーできると期待している。
その点がクリア出来るのであれば、ネッツの懸念はある程度払拭出来るだろうが、インサイドの層の薄さ&選手の質は引き続き懸念材料かもしれない。
イーストにはエンビードやヤニスといった強力なインサイドプレイヤーが揃っており、優勝を狙う上ではインサイドプレイヤーの質がネックとなるだろう。
クラクストンは着実に成長を続けているが、一流プレイヤーと比較するとどうしても劣るだろうし、シャープはまだ若い。オフェンス面というよりはディフェンス面でその弱点を突かれてしまうのではないだろうか。
インサイドの強さはペイント周辺の得失点だけでなく、リバウンド数にも大きく影響する。ゲームの流れを相手にコントロールされてしまう可能性も考えられる。
注目選手
ベン・シモンズ
ハーデンとのトレードで獲得したシモンズを無視するわけにはいかない。ポテンシャルは無限大でアウトサイドシュートが打てなくともネッツにはフィットすると思う。
ロスターの大半はアウトサイドシュートを備えており、シモンズ向けにスペースを与える戦術も採用されるかもしれない。そうなれば最大の弱点も軽減される。
もちろん求められる最大の役割はディフェンス面になるはず。サイズを活かしたインサイドプレイヤーへのマッチアップや機動力を活かしたウイングへの対応など、多くの局面でチームディフェンスの改善に繋がる活躍が期待される。
ニューヨーク・ニックス
ロスター
HC:トム・シボドー
戦術/強み/今シーズンの所感
昨シーズンは少しばかり失点がかさんでしまったが、2020-21シーズンで際立っていたディフェンス力の高さが特長のチームだ。シボドー体制が続く限りはこのスタイルは継続するだろう。
オフェンス面ではクラシカルな戦術を採用しており、ハーフコートオフェンスを中心とした組み立てを行う。ただチームで崩すのではなく個人で崩すことが多いのも特徴で、ランドルのポストプレーを起点とすることが多い。そういった背景からアシスト数がリーグでも少ないのが特徴。
技術的な選手というよりはハッスルプレーをする選手が多い印象で、ロビンソンやランドルといったフィジカルに優れた選手をロスターに揃えるため、インサイド勝負で当たり負けせず、リバウンドに強い。
課題/懸念点
オフェンスパターンの少なさが最大の欠点と言えるだろう。
若い選手をドラフトで獲得し、少しずつトランジションの機会が増えたが、依然としてハーフコートでのアイソレーションが多い。
ボールムーブメントが少ないため、フリーの味方もなかなか生まれず、最終的に独力で切り崩すパターンが散見される。無理なドライブからのターンオーバーが失点につながっており、本来得意とするディフェンスを自らのミスで壊してしまうように思う。
注目選手
ジェイレン・ブランソン
今のニックスに欲しい選手が加わった印象だ。
ランドル以外で点が取れるスコアラー、チームを回せる司令塔。そのどちらも兼ねそなえているブランソンはニックスを低迷から救えるキープレーヤーとなるかもしれない。
サイズの関係でディフェンスには苦労しそうだが、その弱点を差し引いてもチームに貢献できるだけの才能がある。
フィラデルフィア・セブンティシクサーズ
ロスター
HC:ドック・リバース
戦術/強み/今シーズンの所感
イースタン・カンファレンスだけでなく、現NBAでも随一のタレント力を並べるロスターと言えるだろう。
インサイドを完全支配するエンビードにパサー&スコアラーのハーデンとそのオフェンス力は圧巻だ。万能スコアラーであるハリスとハーデンとの相性の良さを見せるスラッシャーのマキシーもチームを彩る。
3&Dのダニーグリーンが抜けたのは痛手だが、更にスケールアップしたタッカーを新たに迎えられたのは大きなプラスだ。
ベンシモンズが抜けたことでエンビードのインサイドはより際立っており、その周りをシューターで囲う戦術は今シーズンも軸になるだろうが、リバースの経験を活かしたプレイヤーマネージメントにも注目したい。
守備職人のサイブルを起用した守備的ラインナップへの変更、ハレルが加わったことによるインサイドのローテーション。選手層が厚いことによるオンコートの組み合わせも見どころの1つだろう。
課題/懸念点
選手の質、ヘッドコーチの経験と隙が無さそうなロスターに見えるが、実は見た目以上に結果が出ていない。
ここ最近は安定した順位でプレーオフ進出を決めているが、データ上の数値はほぼ全てがリーグ中位に留まっており、リバウンドに関してはワースト2位だ。
データだけを鵜吞みにするとプレーイントーナメントを戦うレベルのチームであり、今シーズンはデータ通りに苦戦するかもしれない。ロスターの強さ=結果に反映されない可能性があるチームなだけに思わぬ結果に終わることもありそうだ。
ハーデンのオフェンス力低下も少なからず気になるところではある。
注目選手
PJ・タッカー
エンビードがこのチームの主軸であることに変わりはないし、最注目選手であることに間違いないだろうが、新加入のタッカーに注目したい。
シクサーズのチームスタイルとしてはエンビードに自由を持たせるインサイドスペースの確保が重要となる。そういった意味でタッカーのプレイスタイルは味方を邪魔することなく、むしろスペースを空けることに繋がる。
もちろん得意のディフェンスでも貢献できるため、チームのニーズにはバッチリとフィットできる選手像だ。
トロント・ラプターズ
ロスター
HC:ニック・ナース
戦術/強み/今シーズンの所感
育成と戦術に定評のあるナースが率いるラプターズはバランスの取れたロスターと言えるだろう。アシスト以外はリーグ平均を超えるくらいのスタッツを残している。
とりわけディフェンスを得意とするチームであり、スイッチを多用する他、隙を見たダブルチームで失点リスクを減らすカバーリングが巧い。ガードがウイングにビッグマンがガードにマークチェンジする場面もあるわけで、機動力とフィジカルを備える選手が多い。
本来のポジション以上にインサイドに強いため、意外にもリバウンド数はリーグでも上位の数値を記録している。
何より今シーズン注目したいのはビッグラインナップの本格化だ。昨シーズンにバンブリートが欠場してからは積極的な導入している選手起用で、アヌノビーをガードに他の4人をビッグマンで固めていた。ロスターの持つフィジカル的な強さを全面的に押し出し、アイソレーションでインサイド勝負に持ち込む戦い方は意外にもその可能性を見せている。
今シーズンもチームオフェンスから個でのフィニッシュを重視するのか注目したい。
課題/懸念点
シアカムやヤングといったスキルフルなビッグマンを抱えるため、ビッグラインナップの採用は問題ないかもしれないが、得点の効率性は気になるところだ。
フィジカルを活かしたミスマッチでインサイドを攻めるオフェンスは一見すると効率がよく見えるだろうが、2点しか入らないうえに、チームとしては崩し切れていない強引なプレーと言える。
年々スリーポイントのアテンプトだけでなく、アシスト数も減少を続けているチーム状況は近いうちに限界を迎えてしまうかもしれない。
注目選手
パスカル・シアカム
ビッグラインナップを続けるか続けないかに関わらず、シアカムには期待したい。
ここ最近は一時の成長から足踏みが続いているが、バンブリートと並ぶチームの大黒柱であることに変わりはない。
チーム力は決して高くないラプターズをリーグ中位から上位チームへ引き上げるためにもシアカムの成長は必要不可欠だし、そのポテンシャルはまだ残されているはず。
シカゴ・ブルズ
ロスター
HC:ビリー・ドノバン
戦術/強み/今シーズンの所感
リーグ上位のシュート精度でどこからでも点が取れるオフェンシブチーム。
トランジションとハーフコートを得意とする選手がそれぞれ揃っている点が特長だ。トランジションではボールの運びからアリウープ、ハーフコートではブーチェビッチのスクリーンプレイを起点に各レンジから効果的なショットを沈めていく。
局面に応じてバランスよくスコアに繋げる点は見ていて面白く強さを感じる。
デローザンもラビーンも個人で崩せる選手なだけにクラッチタイムの勝負強さが魅力だが、裏を返すと連携面が際立つわけではなく、ボールムーブメントも少なめ。カバーリングが早いチームとの対戦では今シーズンもどのように振舞うか注目したいところだ。
苦手とするインサイドはドラモンドの加入で心強くなるはずで、タイスの放出後はリバウンド勝負で後手を踏んでいたが、セカンドチャンスの得点にも期待が出来るだろう。サマーリーグでシモノビッチも台頭しており、選手層の厚さも長いレギュラーシーズンにおいて強みになりそうだ。
課題/懸念点
高いオフェンス力を誇る一方でディフェンス力が最大の課題だ。
昨シーズンのディフェンシブレーティングはリーグ23位とプレーオフを戦うチームにしては極端に悪い。中でもビッグマンに対してのディフェンスに難があり、特にヤニスを擁するプレーオフのバックス戦ではその弱点を完全に露呈した形となった。
ロスターを見渡してもややアンダーサイズな選手が多く、サイズの大きい相手にはブーチェビッチくらいしか対応できない。そのブーチェビッチもディフェンスタイプではなく、機動力は高くない。
イーストには高い能力を持つインサイドプレイヤーが揃うため、エンビードやヤニスといった選手への対抗策が見つからないと今年もポストシーズンは苦戦が予想される。
注目選手
アンドレ・ドラモンド
基本はブーチェビッチが先発として起用されるだろうが、ドラモンドにはリバウンダーとしての活躍が大いに期待されている。ブルズロスターの弱点であるインサイドを強化して欲しい。
スクリーンプレイの際にパススキルが求められるブルズセンターではあるが、意外にも器用さを備えるドラモンドはフィットできそうだ。ブーチェビッチとは違った関わり方が出来そうで、繋ぎ役としての役割にも注目したい。
クリーブランド・キャバリアーズ
ロスター
HC:JB・ビッカースタッフ
戦術/強み/今シーズンの所感
ミッチェルを獲得したことで昨シーズンとは全く違うロスターになったと言える。
ハマっていたビッグラインナップとは打って変わって、1-3番ポジションはスモールラインナップになることが予想され、その戦術の変化は予想がつかない。
引き続きガーランドが攻撃の起点となり、ビッグマンを活かすことには変わりないだろうが、昨シーズンとの大きな違いは「個人技で勝負できる選手が加入した」ことにある。
ビッグラインナップの特性上、ガードがハンドリングする機会が増え、フロア上のパスセンスによってオフェンスが左右されることがあったが、ミッチェルの加入は独力で勝負できるカードが加わった。これによりガーランドが抑えられたことによるオフェンス力の低下は抑えられそうだし、プレーの選択肢が増えることで、クラッチタイムのプレーもディフェンスに的を絞られないようにすることが可能だ。
課題/懸念点
懸念点はガードの圧倒的なサイズ不足ではないだろうか。
昨シーズンはディフェンスの向上で躍進に繋がっていたが、今シーズンはディフェンス力の低下が予想される。特にペリメーターでの攻防に大きな差が生まれそうで、チームでカバーしあえるかが鍵となりそうだ。
またオフェンス面ではミッチェルの加入によるケミストリーが気になるところ。主軸の入れ替えは戦術に大きな変化が生じるため、すんなりとチームに馴染めるかどうか、プレシーズンでの出来を見てみたい。
注目選手
アイザック・オコロ
先述したようにガードのディフェンス力が弱点になることが予想され、サイズや機動性からもオコロがディフェンス面で引き続き要になることは間違いない。
アレンという強力なリムプロテクターがインサイドに陣取るが、それ以外のエリアディフェンスが勝利を掴むカギになりそうで、ディフェンスで流れを掴む意味でもオコロの存在感は大きくなると予想している。
デトロイト・ピストンズ
ロスター
HC:ドウェイン・ケイシー
戦術/強み/今シーズンの所感
着々とドラフト指名で将来の有望株を集める再建チームではあるが、ある程度ロスターは形作られているように思う。特にガードの層が厚く、カニングハムとアイヴィーのデュオは楽しみであり、控えからはヘイズが控える充実ぶり。
チームとしては今後フロントコートを強化していきたいはずで、ドラフトで獲得したデュレンや未完の大器バグリーといった選手の見極めを行っていくかと思う。選手は多く抱えるため、現状はふるいにかけるフェーズに入っていると予想され、選手としても生き残りをかけるシーズンが今後2シーズンほど続くはずだ。
ウォーカーやバークスといったベテラン選手にとっては、新天地への契約を手にするためにも「また別の戦い」が起きるだろう。
若手やベテランが入り混じるロスターにおいて互いのビジョンは違うだろうが、チームを勝利させる共通意識のもとで切磋琢磨して欲しいところだ。
課題 / 懸念点
現状のメンバーを見るに勝ちに行く段階ではないため、特に懸念はないが、いつまでを目標に再建完了とするかが気になる。
来シーズンは2巡目指名権しか持っておらず、負けることによる恩恵が無いと言ってよい。チームとしては現有戦力でどこまで通用するかチェックするために最大限のプレーを行う可能性もありそうだ。
注目選手
マービン・バグリー
かつてのドラフト2位はその実力を発揮できないままキャリアが進行してしまった。
しかし、プレータイムを貰えればある程度の活躍を見せているように思う。シーズン平均で30分以上の出場はないため、主力としてどこまで活躍できるかは見てみたいところだ。
幸いピストンズはフォワードに絶対的な選手が不在のため、ボグダノビッチを優先しなければ最長のプレータイムを貰えるかもしれない。
今シーズンの活躍で将来的なピストンズの主力選手になれる可能性もあるため、眠れる才能の覚醒はあるのか注目したい。
インディアナ・ペイサーズ
ロスター
HC:リック・カーライル
戦術/強み/今シーズンの所感
昨シーズンに主力の放出でロスターの刷新を敢行したため、完全再建を迎えた上で初のシーズン開幕を迎えることになる。
すぐに勝てるチームになることはないだろうが、既に実力を証明している選手も多く、2,3シーズン後にはリーグ中位に付けるようなロスターになっているかもしれない。
結局ターナーだけは残留しているが、これはカーライルの戦術を踏まえた上での選択だと予想している。アウトサイドシュートを軸にオフェンスを組み立てる傾向があるだけにロスターもシューターを揃え、ドラフトでもカレッジ屈指のシューターであるマサリンを獲得した。
サンズではプレータイムを得られなかったスミスもペイサーズとは相性がよさそうで、他にもセルティックスから加入したネスミスのように他チームで伸びなかった選手がどこまで実力を証明できるか楽しみなチームかと思う。
課題/懸念点
サボニス、ルバート、遂にはブログドンも放出したことで、再建へと舵を切ることになったが、これが正しい選択だとファンに思わせる必要がある。
今シーズンは流石にその成果を求めることはないだろうが、今後3年ほどで結果が出てこないと納得はしてくれないだろう。
現時点でまだ課題は見えてこないが、今回の選択が正しかったことを証明できる準備を着実に進めて欲しいところだ。
注目選手
ジェイレン・スミス
既に可能性を見せているハリバートンやデュアルテには今更注目する必要がないため、他の選手の出来に注目したい。
マサリンも楽しみだが、まだ実力が見えていないスミスの限界値がどういうものか、その評価を決定づけるシーズンとして見ていきたい。
アウトサイドを中心とする戦術ではその素質も存分に計り知れるはず。
ミルウォーキー・バックス
ロスター
HC:マイク・ブーデンホルザー
戦術/強み/今シーズンの所感
歴代屈指のビッグスラッシャーであるヤニス、それをシューター陣が囲む隙のないロスターはバランスに富んだリーグ随一の「安定したチーム」だ。経験値も高く大舞台で大崩れしない強さも持つ。
昨シーズンはポーティスが台頭したこともあり、特にインサイドが強力。リバウンド数もリーグ2位でシューター陣が恐れることなくショットを放ち、開いたインサイドスペースをヤニスが切り裂く、インアウトでお互いを支え合うことが出来ている。
もちろん多くのツーウェイプレイヤーを擁するロスターでディフェンス力も非常に高い。ペースが速いチームなために、ディフェンシブレーティングはリーグ中位に留まっているが、得失点差はレギュラーシーズン、プレーオフ共にプラスとなっている。
課題/懸念点
ほとんど隙のないロスターだが挙げるとすれば、スリーポイント効率にある。
昨シーズンはレギュラーシーズンこそ良かったものの、プレーオフでは32%と苦しんだ。ヤニスとの相性という意味でも外角のショットは生命線であり、スリーポイントが決まらないと流れがつかめない試合もいくつかあった。
また、ヤニスのアウトサイドショットも同様で、少ない成功数はまぐれボーナスに近い感覚のように思う。ミスショットからの失点で流れが変わる場面もあるだろうし、期待値が低いショットの乱発は怖さがある。
注目選手
ヤニス・アデトクンボ
既に完成されたロスターなだけに新戦力はほとんどなく、今シーズンもやはりヤニスに注目をしたい。バックスはヤニスのチームと言ってよいほど戦術は合わせている。ヤニスの出来によって成績も左右されるだけに、今シーズンも圧倒的な活躍をして欲しいところ。
アトランタ・ホークス
ロスター
HC:ネイト・マクミラン
戦術/強み/今シーズンの所感
ペースこそリーグ中位に関わらず、圧倒的なオフェンス力でリーグ2位のオフェンシブレーティングを誇る超攻撃的なスタイルが魅力のチームだ。ヤングを中心としたゲームコントロールでアリウープやピック&ロール、引き出しの多いオフェンスセットは見応えがある。
一方で失点はリーグ下位のうえ、好不調の波が激しいチームでもある。大差で勝つ試合もあれば、負ける試合もしばしば… 試合の出来に大きな差がある点も特徴といえる。
その点をピンポイントで改善するためにマレーを獲得したのは、チームの方向性としても非常に良かったと思う。
同じポイントガードながらもタイプは全く異なっており、「創造性のヤング」「堅実なマレー」といったようにオフェンスの使い分けが可能だ。
また、スコアリング方法もスラッシャーのマレーとシューターのヤングで特性が分かれており、オフェンスパターンに様々なアレンジが加えられそうだ。マレーのディフェンス力とインサイドで体を張れるリバウンド力にも期待をしたい。
課題/懸念点
このチームは良くも悪くもヤングのチームとなっている。
オフェンスではヤングからのパス供給が断たれた瞬間に停滞し、ディフェンスではターゲットにされるため、チームでのカバーが求められる。
その両面を改善するためのマレー加入だが、連携面は未知数。
先ほどはタイプが異なるために問題ないとしたが、うまくいかない場合も当然あるだろう。
オフェンスのロールをヤングとマレーでシェアした際に、ヤングの良さが薄れてしまうことが怖い。ボールを持って活躍するタイプなだけに、オフボールでの動きがキーとなりそうだ。
注目選手
デジョンテ・マレー
ホークスのチーム改善を一手に期待されるマレーには当然大きな期待がかかるだろう。
エースとしてではなくサポートに回れる選手なだけに、ホークスの優秀な攻撃陣を底上げして欲しいところ。
当然苦手としている対ガードへのディフェンス力も期待したい。既にオコングによるウイング~ビッグマンへのディフェンス、カペラによるインサイドディフェンスは完成形に近いように思う。
シャーロット・ホーネッツ
ロスター
HC:スティーブ・クリフォード
戦術 強み/今シーズンの所感
エネルギッシュな若手を多く抱え、トランジションから流れを作る超オフェンシブチームだ。アシスト数もリーグ1位でボールムーブメントの流動性も特徴。ラメロを中心に魅せるプレーが多く、NBA随一のエンターテインメント性がある。
一方でディフェンスには課題があり、今シーズンからはクリフォードが担当することになった。クリフォードはケンバ・ウォーカー在籍時の2013年から2018年まで指揮を執っており、ホーネッツのカルチャーは理解しているはず。
前任のジェームズ・ボーレゴと違い、ディフェンスを得意とするヘッドコーチであり、今シーズンは攻守でバランスの取れたチームになる可能性も大いに考えられる。守備ではハードワークを徹底させる速い帰陣を求めるタイプで、今の若いロスターには走力もありフィットするように思う。
オフェンス面では特定の選手を中心に据えた戦術を展開するスタイルが特徴で以前はケンバウォーカーを軸にホーネッツの快進撃を支えた。今のチームではその役割をラメロが担当することになりそうで、ヘッドコーチが変わってもそのオフェンシブなスタイルが損なわれることは無さそうだ。
課題/懸念点
ヘッドコーチの交代でホーネッツの躍進を楽しみにしている反面、1つ気がかりな点がある。
それはハーフコートオフェンスでピック&ロールを中心とした戦術の採用だ。
ホーネッツの指揮を執った後はマジックを2021年まで率いたが、その際の基本戦術はディフェンスを厚く、オフェンスはブーチェビッチのピック&ロールのみとややシンプルな内容を軸としていた。
そのスタイルをホーネッツに当て込んだら、失敗する可能性が高いだろうし、面白みが全くなくなってしまうように思う。恐らく基本戦術はそのままにディフェンスの改善に取り組むだろうが、少しばかり気になるところだ。
注目選手
マーク・ウィリアムズ
ジョーンズが伸び悩んでいる中、今年のドラフト生であるウィリアムズが正センターに抜擢されるかもしれない。
サマーリーグでもその能力を遺憾なく発揮しており、機動力の高さを見せつけていた。元々ディフェンス力を買われての指名だろうが、チームメイトを活かすスタイルのホーネッツではオフェンスでも貢献できそうだ。
マイアミ・ヒート
ロスター
HC:エリック・スポールストラ
戦術/強み/今シーズンの所感
ロスターだけを見ると、他強豪と比較して見劣りするかもしれないが、経験豊富な主力と百戦錬磨のヘッドコーチの存在はヒートを常に強豪たらしめている。特にバトラーを筆頭にツーウェイプレイヤーを多く擁する陣容はディフェンシブで失点を極限まで抑えている。
攻撃面ではスプリッドオフェンスを得意としており、トップからウイングと呼ばれるポジションに選手を並べ、他の選手はコーナーに待機させ、ペイントエリアにスペースを空けるシステムを採用している。アデバヨからのハンドオフやピック&ロールを重視するヒートにとっては最適なオフェンスシステムで縦横無尽なカッティングを継続する。
タッカーの放出は痛いものの、オラディポ完全復帰への期待やヨビッチの加入と楽しみな要素は多く揃っている。ロビンソンの復調にも期待しており、再びのファイナル進出を照準にマネージメントして欲しいところだ。
課題/懸念点
昨シーズンにいぶし銀の活躍をしたタッカーの放出はかなりの痛手と言えるだろう。ただでさえパワーフォワードには選手が揃っておらず、その代替選手も用意できていない。
アデバヨをフォワードにスライドして、ユルトセブンをセンター起用する布陣も考えられるが、ルーキーのヨビッチを抜擢するサプライズもあるかもしれない。
いずれにせよタッカーを補填できず、そのディフェンス能力以上にシューターがいなくなったことが戦術的に厳しくなるだろう。何しろ得点源のバトラーとアデバヨはペイントを主戦場としているからだ。
注目選手
カイル・ラウリー
昨シーズンは不完全燃焼に終わったラウリー。
鳴り物入りで加入したもののインパクトを残せず、ストゥルースやヴィンセントの活躍の方が目立っていたくらいだ。
年齢的な限界もあるだろうが、ヒートカルチャーに通ずるハッスルプレーを得意としており、バトラーとヒーローに次ぐオフェンスの中心となれる存在。
若い選手へ経験を伝えるメンターとしても、チームを活性化できるリーダーとしての活躍を期待したいところだ。
オーランド・マジック
ロスター
HC:ジャマール・モズリー
戦術/強み/今シーズンの所感
バンケロの1位指名はサプライズだったが、サマーリーグの出来を見るに大成功のドラフトだったように思う。
ガードに優秀な選手を抱える一方でフォワードの質に不安を残すロスター状況だったが、昨シーズンのフランツバグナーのサプライズな出来。今シーズンのバンケロの加入は非常に将来性を感じるロスターに仕上がっている。
そして、今シーズンはフルツも開幕からプレー可能でアイザックも復帰予定、ハリスこそ不在だが、戦力が揃った状態でシーズンを迎えることが出来る。
いよいよマジックの立ち位置が分かるだろうし、やや飽和気味なロスターを査定するシーズンになるはずだ。
シーズン終了後にはロスターの大半がチームオプションになっているため、来シーズンに誰がロスターに名を連ねているのか気になるところだ。
課題/懸念点
再建チームだということもあるが、他の再建チーム以上に懸念は少ないと思う。
モズリーの育成は信頼できるものがあり、ドラフト指名した選手も概ね活躍を見せている。敢えて言うならば、サッグスが期待した活躍が出来ていないこと、復帰明けのアイザックがどの程度のプレーをするのかだろうか。
注目選手
パオロ・バンケロ
ありきたりな選択だがやはりバンケロは大注目選手。
強いチームには個人で打開できるスコアラーがいるが、バンケロは平均25点以上を期待できるだけのポテンシャルを持つ。絶対的なスコアラーが不在のマジックとしてはバンケロの活躍次第で再建の出来が決まりそうだ。
また、バンケロの魅力はスコアだけでなく球離れの良さにある。意外にも器用なプレーをこなせるため、リバウンドにも絡んでこれれば、リーグ随一のオールラウンダーになれるかもしれない。
ワシントン・ウィザーズ
ロスター
HC:ウェス・アンセルドJr
戦術/強み/今シーズンの所感
昨シーズンに就任したアンセルドHCはスリーガード体制にこだわっており、今シーズンもその流れを継続するかもしれない。ロスターにはスタイルが違うフォワードを多く揃えるため、個人的にはフォワードの起用を中心として欲しいが、ローテーションに注目をしたいところだ。
また、昨シーズンはビールとポルジンギスが共にプレーする機会がなかったため、新戦力を加えた上での連携面は興味深い。上述した戦術も新戦力の加入で変更が生じるかもしれないし、システムに決まりごとが多いアンセルドだが、全く違った戦術になることもあり得る。
昨シーズンの序盤戦は好調だっただけに今シーズンも開幕スタートダッシュはあるのか、、楽しみである。
課題/懸念点
懸念点はいくつかあって、まずはビールの個人技だろうか。
ここ数シーズンはパスの選択肢を持たずに無理なリムアタックが目立っていた。フィニッシュが難しいと判断した時にパスの選択肢が生まれるのだが、その時点では既にワンテンポ遅く、ターンオーバーに繋がってしまう。セルティックスのテイタムとも似たケースだが、責任感故の突破をコントロールして欲しいところ。
2点目はアウトサイドショットの効率の悪さにある。
スリーポイントアテンプト自体少ないチームではあるが、決定力も34%とかなり低い。一方でツーポイントの決定力は高いが、ズルズルと点差が広がってしまう展開となってしまう。
3点目はアンセルドのアジャスト力だ。
開幕後のように勝ってるときは流れに乗るが、戦術を攻略された後の解決策が見つけられずに連敗をしてしまう傾向にある。
ロスターが変わっているだけに昨シーズンとは違ったウィザーズを期待したい。
注目選手
カイル・クーズマ
ロスターを見渡すとメンバーの大半が二桁得点を期待できるだけの力を持っている。ビールやポルジンギス以外の選手も絡んだチームオフェンスが重要になるだろうし、第3の男の台頭が必要になると思う。
クーズマは攻守万能なオールラウンダーであり、ボールムーブメントの仲介役としても活躍できる。
ウィザーズの戦術次第ではあるが、クーズマや八村、アブディヤといった選手がチームに流れをもたらし、特定の選手が活躍するのではなく、連携した戦いを見てみたい。
以上、今回はイースタン・カンファレンスの全ロスターを紹介してきた。
間もなくプレシーズンが開幕となるが、各チームの出来にも注目しつつ、醍醐味であるローテーションプレイヤーの台頭にも期待をしていきたい。
果たしてプレシーズンマッチから予想外の番狂わせがあるのかどうか、非常に楽しみだ。