2022-23シーズンのNBA開幕まで1か月を切り、各チームのロスター補強もある程度終わりを迎えた頃だろう。
今回はウエスタンカンファレンスに所属する全15チームのロスター・戦術・課題を解説し、今シーズンの戦力分析をしていこうと思う。
※文中記載スタッツはレギュラーシーズンの内容がメイン(プレーオフの場合は注釈あり)
※ロスター情報は10/8時点(土)
デンバーナゲッツ
ロスター
HC:マイケル・マローン
戦術/強み/今シーズンの所感
健康体であればNBAトップクラスのロスターを誇る点は今シーズンも変わりないだろう。
スタメン5人だけでも100点を記録できるオフェンス力を持ち、オフにコールドウェルポープを補強したことでディフェンス面の安定感も増した。
何よりヨキッチの存在感が非常に大きい。2年連続MVPの力は伊達ではなく、ヨキッチがコート上にいるだけで戦術のバリエーションが多岐にわたる。
ハイポストからのバックドア、自らスリーポイントアテンプト、フィジカルを活かしたポストプレイ、終いにはコートを一閃する大遠投が飛び出してくる。「ヨキッチこそが戦術」と言えるほどゲームを支配しており、不在の場合はまた別のチームになると言えるだろう。
ウィルバートンの放出はあったが、ゴードンのようにカッティングを得意とする選手も多く、ヨキッチのパスビジョンが最大限に活きる環境なのも大きい。
今シーズンはマレーとポーターも復帰しており、ヨキッチ一人でウエスト6位まで引き上げたチームは間違いなく優勝候補の一角と言える。
プレーオフマレーがレギュラーシーズンでも見れるようであれば、手が付けられなそうだ。プレー時間が増えそうな若きハイランドのプレーにも注目したい。
課題/懸念点
先述したように健康体であれば強いが、常に怪我とのリスクが付きまとうのはナゲッツの不安要素だ。特にポーターは慢性化しそうな欠場を続けているために、最大限の力を発揮できないまま終わる可能性もある。
主力選手に高額のサラリーを提示しているため、現状の戦力で今後数年を戦うことになるだろうし、機能しなかった場合にはチームを入れ替えることも難しい。
歴史上でも非常に魅力的なチームではあるため、選手には怪我無くシーズンを戦い抜いて欲しいことを祈るだけだ。
注目選手
アーロン・ゴードン
ロスターには魅力的な選手を数多くそろえるが、個人的にはゴードンに注目をしたい。サイズとフィジカル、そして機動力を武器にディフェンスでの貢献が求められているが、オフェンスでのステップアップを今シーズンこそ見てみたい。
高額の契約を結んでからも主要スタッツに伸びが無く、「第4の男」から第2,第3の男になるぐらいの活躍を期待している。パワーフォワードポジションではゴードンのスピードについて来れる選手はそういないだろうし、ウイングとマッチアップすればフィジカルで押し切れる。使ってもらうだけでなく、自ら積極的にアタックする姿勢に注目したいところだ。
ミネソタ・ティンバーウルブズ
ロスター
HC:クリス・フィンチ
戦術/強み/今シーズンの所感
フィンチ体制で劇的な躍進を遂げたチームはオフにゴベアを補強し、勝ちに行くフェーズに入った。出すものは出し尽くし、負けられないシーズンを戦うことになる。ウルブズがそういった立ち位置になってくれたのはNBAファンとして楽しみなところだ。
オフェンス面ではリーグ1位のペースを武器にとにかくシュートを放ち、成功率が低いながらも7位のオフェンシブレーティングまで繋げている。
ペースが速いと当然ディフェンスの回数も増えるわけだが、昨シーズンのウルブズはここが一味違っていた。個々のディフェンス能力は高いとは言えないため、若さという機動力を活かしたカバーリングを徹底。ドライブに対してはヘルプでダブルチームを行い、フリーの相手にスライドするスタイルで失点をかなり抑えた。
それでもインサイドに侵入された場合はタウンズがターゲットにされ、得点を許す場面が少なからず見られたのは事実。それに対してのゴベアの補強はピンポイントで課題解決に繋がりそうで、ツインタワーの始動は本当に楽しみで仕方ない。
課題/懸念点
やはり気になるのはゴベアが本当にフィットするのかどうかだろう。
やや出し過ぎなトレードにもなったわけで、失敗したときの代償はとても大きい。個人的にはお互いの弱点を補完できる関係で問題ないように思うが、ディフェンスの際に機動力が問題になるかもしれない。
恐らくゴベアはゴール下に待機するだろうが、そうなるとタウンズはペイントの外に出てディフェンスをすることになる。スクリーンプレイやペネトレイトでヘルプする際にカバーリングが遅れてしまうのではないかという可能性だけ不安だ。
そこが問題なくクリアできるようであれば、今シーズンのウルブズはかなり面白いチームになると思う。
注目選手
カール・アンソニー・タウンズ
エドワーズがオールスターブレイク後の活躍を今シーズンも継続できるか気になるところだが、やはりツインタワーの一角になるタウンズには注目したい。
昨シーズンはエースの座をエドワーズに譲ることもあったわけで、歴代屈指のスコアリングセンターの力を見せて欲しいところ。と同時にディフェンス面の奮起にも注目だ。昨シーズンはリング下で待機しており、動きは少なかったが、ゴベアの加入でペリメーターゾーンのディフェンスも必要となってくる。そうなった時に横方向の動きについていけるのか、普段と違う役割をすんなりとこなせるのか見ていきたい。
オクラホマシティ・サンダー
ロスター
HC:マーク・ダグノー
戦術/強み/今シーズンの所感
直近のドラフトでは多くのガードをピックしており、多彩なハンドラーがゲームコントロールを行っている。コート上の組み合わせで様々な戦術を見せてくれるのは、再建のチームながらもファンを楽しませてくれる。
特にギディーのプレーは意表を突くプレーが多く、通れば得点に直結するアシストを供給してくれる。連携が高まれば、リーグワーストのオフェンス力も改善が期待できそうだ。
ただNBAロスターの中でも再建中の再建チームであることに変わりはないため、若手の成長を見るような楽しみ方をしていきたいところ。ホルムグレンの怪我は残念だが、今年も有力なドラフト生を指名しており、まだまだ荒削りだがサイズとスキルを備えるジェンには注目をして欲しい。2,3年後には面白いプレイヤーになってくれるのでは、と期待している。
課題/懸念点
ホルムグレンの全休もあり、再建はさらに長引くことになりそうだが、フォワードの戦力がなかなか育ってこないことが気になっている。ベイズリーは二桁得点こそ達成しているものの、ポクシェフスキーは10得点に満たず、ショットの成功率に苦しんでいる。このままではフォワードの戦力を探す必要性がありそうだ。
また、このチームの最大の弱点としてアレクサンダーの依存度が挙げられるだろう。出場しているかいないかで勝率にも大きく影響しているため、他戦力の底上げを期待したい。
注目選手
ダリウス・ベイズリー
ベイズリー含めてフォワードの台頭が無いサンダーだが、シーズン終了後には契約満了を迎えることになる。今シーズンも伸び悩みが続くようであれば、契約延長はないため、生き残りをかけるシーズンとなる。
ポクシェフスキーにも注目したいが、個人的にはベイズリーの方を推したい。フォワードとして最適な体格を持ち、ドートと並ぶ優れたディフェンダーとして活躍が可能だ。インサイドのコンタクトに弱く、オフェンス力に課題はあると言われるが、二桁得点をアベレージ出来ていることからも伸びしろを感じている。
ポートランド・トレイルブレイザーズ
ロスター
HC:チャウンシー・ビラップス
戦術/強み/今シーズンの所感
マッカラムを放出し、リラードの怪我により低迷した昨シーズンは一時代の終わりを迎えるように感じたが、ブレイザーズはまだ勝ちに行く姿勢を崩していないようだ。
リラードとの延長契約で今後もエースにチームを任せることを決断し、去就が注目されたグラントを獲得している。意外にもロスターは悪くないように思う。
昨シーズンの怪我の功名か、サイモンズも台頭しヌルキッチと抜群のコンビネーションを見せつけた。主力不在でもチームの完成度は高まっており、リラードが今後も活躍できるようであればプレーオフも見えてきそうだ。
その他、ゲイリーペイトンといったディフェンス力に優れるプレイヤーを獲得し、着実にチームの弱点であるディフェンス力の改善に努めたロスター作りを徹底。ドラフト指名したシャープがサプライズな働きをすればあるいは…?
今シーズン最もパワーバランスが読みにくいチームと言えそうだ。
課題/懸念点
全くの未知数ということに尽きる。
実力が確かな選手もバックアップに控えており、ロスターの層は非常に厚め。
非常に稀なケースだが、個々人が実力以上の力を発揮すると物凄いパワーを秘める反面、プレーイントーナメント圏内にすら入り込めない可能性も十分にある。
実力が読めない=安定感のないチームだとも言えそうで、再建でも勝ちに行くわけでもない今の立ち位置は中途半端かもしれない。
注目選手
アンファニー・サイモンズ
サイモンズの成長は昨シーズンの少ない好材料だった。20得点以上をアベレージ出来る実力を見せつけ、マッカラムに代わるリラードとの新しいデュオの結成に期待が出来る。
チームと契約延長をしない可能性もあったヌルキッチを復活させた能力は、他チームでくすぶっていたウィンズロウといった選手の才能開花にも繋がるかもしれない。
ユタ・ジャズ
ロスター
HC:ウィル・ハーディー
戦術/強み/今シーズンの所感
常々噂がされていたが遂に再建へと舵を切り、未だ主力は残っているものの、チームは白紙になったと言ってよいだろう。
選手の起用法もわからないが、恐らく若手を中心に起用すると思われる。自前の2023年指名権も持っており、言い方は悪いが勝つ必要のないシーズンだ。チームとしては復帰明けのセクストンやアレクサンダーが戦力になるのか、今後の主軸を定めるテストシーズンとしての意味合いが強い。
コンリーやクラークソンもシーズン終了後には契約が切れるため、サラリーに余裕が生まれる来シーズンには更にチームが変わることが予想される。今シーズンは辛抱しつつ、来シーズン以降の進化を楽しみとしたいチームだ。ジャズにはダニー・エインジがいるのだから。
課題/懸念点
再建に入ったということで特にコメントはないが、今後の主軸として見据えているセクストン、ホートン・タッカー、マルカネンの不発もあり得る点だろうか。
セクストンはかつてキャバリアーズのエースをしていたこともあって、実力を証明済みだが、他の選手は必ずしも活躍できる保証はない。逆にエースの役割を与えられたわけでもなため、一気に活躍する可能性も同時に持つ。
是非期待を裏切る活躍をして欲しいものだ。
注目選手
ラウリ・マルカネン
ユーロバスケットでフィンランドのエースとして活躍したマルカネンを推したい。
かつて所属したチームでは重要な役割を与えられず、キャバリアーズでようやく花開いたように感じる。インサイドへの積極的なアタックが見られ、ただのシューターではないことを見せてくれた。
ジャズではエースの役割が必ずしもセクストンになるわけではなく、プレシーズンでの出来によって決まってくるだろう。ブランクを抱えるセクストンや主にセカンドユニットだったホートン・タッカーと違い、マルカネンは代表を含む試合勘でコンディションは仕上がってるはず。欧州の隠された才能が花開くシーズンになることを期待したい。
ゴールデンステイト・ウォリアーズ
ロスター
HC:スティーブ・カー
戦術/強み/今シーズンの所感
昨シーズンの王者は連覇に向けて隙は無い。
ペイトン2世やオット・ポーターはチームを去ったが、若返りに向けたドラフト生や有望株の獲得、ディヴィンチェンゾやジャマイカル・グリーンといったいぶし銀の選手を補強しており、総合力の高さは依然として高いはずだ。
スリーポイントを中心としたオープンスペースへのカッティングは常に最先端の戦術であり、現代NBAのトレンドを築いたスタイルは未だに破壊力抜群。
34歳を迎えるカリーも衰えは感じさせず、もう2年ほどは一線級のチームとなるだろう。
それ以上にウォリアーズの強さを語る要因はディフェンスにある。ディフェンシブレーティング2位はセルティックスに次ぐ数値であり、華麗なオフェンスに目を奪われがちだが、チームの基盤はディフェンスに重きを置く非常に現実的な戦術を用いる。
主力不在といった思わぬアクシデントがなければ、強豪ひしめくウエストでも問題なく勝ち抜けるはずだ。
課題/懸念点
このチームの生命線はカリーでもトンプソンでもなく、ドレイモンド・グリーンにある。スタッツ上では派手な内容ではないが、「アシストのアシスト」といった地味なプレーでチームを支えている。
特筆すべきはディフェンス能力でセンターもこなせるマルチロールは替えが効かない。ウォリアーズ鉄壁の守備を可能にする選手であり、ディフェンスで大崩れした場合の勝ちこぼしはグリーン不在の影響が大きい。ここ最近は少しずつ欠場も増えており、マネージメントに注意して欲しいところ。
ただし問題は来シーズンに控えている。
既に噂になっている通り、シーズン終了後に契約が切れるグリーンとプールの契約問題は不安材料だ。
開幕すらしていないのに来シーズンを語るのは早すぎる気がするが、それ以外にほぼ問題が無いチームであり、ここ数年の王朝が崩れ去る不安はNBAファンなら抱くのではないだろうか。
注目選手
ジェームズ・ワイズマン
個人的な意見では昨シーズンのGリーグMVPであり、今シーズンのサマーリーグで目覚ましい活躍を遂げたマック・マクラーンを推したかったのだが、残念ながら先日ウェイブされてしまった。
というわけで同じく若手のワイズマンを推したいと思う。
昨シーズンは怪我の影響もあり、満足の行く出来とならなかったが、今シーズンはプレシーズンを見るに完全体で戻ってきてくれそうだ。
同期のアンソニー・エドワーズとラメロ・ボールは既に実力を証明しており、ワイズマンとしても結果が欲しいところだろう。
ウォリアーズのセンターといえば、リバウンドや守備といった目立たない選手像をイメージするが、ワイズマンは今までのタイプとは全く違ったセンター像。起用するだけでも戦術に差が生まれ、主にオフェンスで違いを生み出すことが可能だ。
こういったセンターを起用した際にウォリアーズとしてどのように機能するか注目してみていきたい。
ロサンゼルス・クリッパーズ
ロスター
HC:ティロン・ルー
戦術/強み/今シーズンの所感
ウエストは上位チームの完成度が非常に高いが、ウォリアーズ、ナゲッツと並んで豪華なロスターを誇る優勝候補の一角だ。セカンドユニットだけでもチームが作れそうな充実ぶりである。
昨シーズンは2大エースが不在だっため、その実力を完全に図り知ることはできなかったが、今シーズンは開幕から揃うことが予想される。更にウォールの加入とパウエルもいる。オフェンスもディフェンスもこなせるツーウェイプレイヤーの巣窟と化したロスターに隙は無く、得失点差が10に近づくことも夢ではない。
チームのスタイルは個人技主体と思われつつも実はボールムーブメントが多い。
エースの2人もシュートアテンプトが20本を超えず、チームでシェアできているのがポイントだ。そういったバランスの良さも強さの秘訣と言えるかもしれない。
主力のブランクや連携面には不安があるが、アジャスト力に定評のあるティロン・ルーなだけにシーズンが進む毎に完成度は高まってくるはず。個人的には今シーズン一番強いと思うチームがクリッパーズと見ている。
課題/懸念点
懸念点は特にないほどロスターの完成度は高く、来シーズン終了まで主力の契約を残しており、未来の不安も少ない。
あえて言えばレナードがすんなりとチームに戻れるかどうかだろうか。エースが1年のブランクを抱えるのは気になるところ。それをカバーできるだけの戦力が整っているのは助かるが、ポストシーズンに向けたコンディション調整を徹底して欲しいところ。
注目選手
ジョン・ウォール
2010年代を代表するウォールが再び輝きを取り戻す舞台が整ったことは非常に楽しみだ。再建期に合ったロケッツでも十分はスタッツは残していたため、今のクリッパーズでも通用する力は持っているはず。
恐らくマンと並ぶシックスマンとしての役割となるだろうが、ウォール程の選手がベンチから出てくるのは驚異でしかない。スコアラーが揃うチームにおいて、そのプレイメイク能力は最大限に働くだろうし、ディフェンスでももちろん貢献できる。
ロサンゼルス・レイカーズ
ロスター
HC:ダービン・ハム
戦術/強み/今シーズンの所感
クリッパーズと同じロサンゼルスに拠点を構えるレイカーズだが、こちらは全く予想がつかないシーズンになりそうだ。かつてはドアマットと呼ばれたクリッパーズと完全に立場が逆になってしまっている。
昨シーズンはとにかくケミストリーが嚙み合わず、フランク・ボーゲルのレイカーズが得意としていたディフェンスも崩壊。散々たる出来で戦いを終えていた。
その最大の理由は主力選手のプレーエリアが被ってしまったことにあり、ウエストブルックもレブロンもデイビスも得意のインサイドに密集したことで渋滞を起こしていた。
ヘッドコーチが変わっても選手個々のスタイルを変えるのは難しいため、依然として課題となりそうだが、コート上の組み合わせを変えるなど工夫した戦術を見たいものだ。
(ロケッツ時代のウエストブルックとハーデンのボールシェア分散のように)
オフェンスは過ちを繰り返す可能性がありそうだが、今シーズンはディフェンスの復活に期待をしたいところ。獲得した選手もベバリーやアンダーソンといったハッスルプレーでディフェンスを底上げ出来る選手だ。
安定した守備から流れを掴む試合巧者のレイカーズを再び見れることを期待したい。
課題/懸念点
ヘッドコーチの交代とロールプレイヤーの入れ替えで新陳代謝を狙うレイカーズだが、失敗する可能性も高いように思う。
その理由はやはりレブロンとウエストブルックの相性問題にあり、この二人の同時起用を避けない限りは問題が解決しないのではないだろうか。どちらもユーセージレートは高い選手であり、ボールを持ってこそ活躍できる「キング」である。
アシスタントコーチ上がりの新任ヘッドコーチがウエストブルックをシックスマンで起用する思い切った判断が出来れば、何かしらの変化は生まれるかもしれない。
注目選手
ラッセル・ウエストブルック
昨シーズンもレブロンはキングらしい活躍を見せてくれた。
かつてはサンダーで異次元の活躍をしたもう一人のキング、ウエストブルックの出来が今シーズンを左右すると言っても過言ではない。
下降しつつあるスタッツを受けてか、シュートの乱発も多少収まっており昨シーズンはキャリアで3番目に少ないシュート本数(15.8本)だった。
ウエストブルックの魅力はトリプルダブルを記録できる多彩な才能であるため、得点面ではなくリバウンドやアシストのダブルダブルに特化したほうがチームとはうまく回りそうな気がしている。
従来のプレースタイルからチームに合わせたスタイルへ変更することで、機能しそうなレイカーズではあるが、プライドを捨ててでも自分を変えられるか。今シーズンのウエストブルックのプレースタイルには注目してみていきたい。
フェニックス・サンズ
ロスター
HC:モンティ・ウイリアムズ
戦術/強み/今シーズンの所感
レギュラーシーズンはリーグ1位のネットレーティング7.5でやはり安定した力を見せつけた。プレーオフではディフェンシブレーティングが6も悪化し、ネットレーティング0の結果でマーベリックスの前に屈したが、マーベリックスのアウトサイドも出来過ぎな感はあった。
去就注目のエイトンも結局残留し、強いロスターに変わりはない。今シーズンもクリッパーズ、ウォリアーズ、クリッパーズと並んで優勝候補の一角であることは間違いないだろう。
ポールのスティール力とブリッジズ&クラウダーの対人マーク、エイトンのインサイド制圧と個々人の守備能力が高いだけでなく、その実力を持ったうえでチームディフェンスをするのだから隙が無い。
オフェンスではポールとブッカーに自由を与えるためにインサイドのスペースを空け、シューターを配置する、その流動的なオフェンスは決定率が非常に高く48.5%とリーグ1位だ。
ほぼ全てのチームスタッツでリーグTOP10に入る総合力の高さは、データ上でも最高のチームだということを裏付けている。今年こそ悲願の優勝を狙いたいところだろう。
課題/懸念点
正直言ってサンズの弱点は思いつかないが、直近になって気になるニュースが入ってきた。
主力選手のクラウダーがトレーニングキャンプへ参加せずに退団が濃厚だということだ。
理由は定かではないが、オーナーの問題といったコート外の話題が影響している可能性もあるかもしれない。いずれにせよ残留は絶望的なために昨シーズンからの戦力ダウンは否めないだろうし、代役を早急に見つける必要がある。
また、少しばかり気がかりなのはエイトンのモチベーションだろうか。
サンズからの退団が決定的で本人も移籍を希望したが、ペイサーズのオファーにマッチする形で無理やり残留させるような見え方だった。
代理人もサンズとの縁を切る気が丸見えで、チームの士気に影響を及ぼすかもしれない。多少なりともチームのメンバーはエイトンに対して不信感を持ってプレーすることもありそうだ。
注目選手
デアンドレ・エイトン
オフシーズンに色んな意味で注目を集めたが、ポールとの相性は抜群でサンズの体現するバスケットにもフィットする。インサイドの柱として必要不可欠な存在だろうし、センターポジションは控えの層も薄い。
昨シーズンは意外にも活躍したマギーの分までインサイドディフェンスの穴埋めが求められる。言ってしまえば、一人で二人分の活躍を期待したい。
サクラメント・キングス
ロスター
HC:マイク・ブラウン
戦術/強み/今シーズンの所感
遂にその時が来たかもしれない。
20年余り続いたポストシーズン不参戦の歴史に終止符を打てるだけのロスターは揃ったように思う。
昨シーズンのサボニス獲得に続き、ドラフトではマレーを獲得。相変わらず守備力に不安は残すが、オフェンス力はリーグでも指折りのロスターと言えるだろう。
それでも基本は個人技主体のチームのため、相手によってはオフェンスに詰まるケースも多いはず。付け加えるとペイントを中心に攻めるチーム柄、インサイドで渋滞を起こすこともしばしばあった。
それを解決できるのがサボニスのプレイメイクによるオフェンスの変化、そしてスペースを広げるハーターの存在が大きくなりそうだ。
新ヘッドコーチのブラウンも若手との相性が良く、台風の目となりうる新生キングスを注目して見ていきたい。
課題/懸念点
強みとしてはスタメン全員が平均15得点以上を期待できるオフェンシブな要素だが、ディフェンス力はリーグでも下の方。見応えはありそうなのだが、失点の多さは非常に不安だ。
過去にも圧倒的なオフェンスでディフェンスをカバーする戦術もあったが、ポストシーズンの序盤で負けてしまう。それほどまでに守備の重要性は攻撃よりも高く、ディフェンスから流れが変わることも多い。
兎にも角にもキングスというチームは失点を抑えるかどうかで結果が大きく変わってくるだろう。
注目選手
ドマンタス・サボニス
キングスのキングはフォックスに変わりないが、キープレーヤーはサボニスになると思う。
ポイントセンターとして振舞えるサボニスはプレイメイカー不在のチームにおいて、攻撃の起点になるかもしれない。
分かりやすい例はナゲッツのヨキッチで、フォックスはナゲッツでのマレーを指す。連携で崩すことが少ない個の集団から、チームになれるかどうかが成功の要因になると予想する。
ダラス・マーベリックス
ロスター
HC:ジェイソン・キッド
戦術/強み/今シーズンの所感
昨シーズンはプレーオフでその真価を発揮し、圧倒的なスリーポイント攻勢で想定外の躍進を見せた。レギュラーシーズンも4位と充実のシーズンを送り、プレーオフで見せた戦いぶりを平時でもこなせば、西の強豪を脅かす存在となるだろう。
キッド就任後もドンチッチを中心としたワンマンチームの感は否めないが、ロスターを見渡すとその役割に納得しても良いかもしれない。
どちらかというと主役の脇を固めつつ、15点前後を生み出す優秀なロールプレイヤーが並ぶため、ドンチッチの圧倒的な個性を活かすのに一躍買っている。
ポルジンギスは抜けたが、ウッドの加入は全く違うマーベリックスを見せてくれるかもしれない点も楽しみだ。その強みをなかなか活かせず、シューターに終始したポルジンギスとは違って、ウッドはよりインサイドでプレーする選手だ。
一つ間違えばドンチッチのスペースが潰れかねないが、ウッドとドンチッチがそのポジションを入れ替え、流動的なオフェンスが見れるかもしれない。
課題/懸念点
昨年の大躍進はニックスへ動いたジェイレン・ブランソンの影響が非常に大きく、その代役は見つかっていないように思う。タイプ的にはディンウィディーが該当しそうだが、ドライブの切れ味に違いがあり、フィニッシュの駆け引きにどうしても差が出てしまう。
恐らくオフェンス力に陰りを見せることになりそうだが、その分を他の選手でカバーするチームでの連携面を見てみたい。現にこのチームはドンチッチの力に左右されることが多いのだから。(昨シーズンはドンチッチ不在でもブランソンで穴埋めが出来ていた。)
注目選手
スペンサー・ディンウィディー
ネッツでの好調なプレーから怪我の影響でキャリアが振り出しに戻ってしまったが、ブランソンが抜けた今、ディンウィディーの奮起が必要不可欠に思う。
代役を立てなければならないほど必要な存在だったわけで、それでもディンウィディーならその穴を埋められるのではないかとも期待してしまう。
独特なリズムで得点を生み出す能力はブランソンに通ずる物はあるし、全く同じロールでなくとも同等のスタッツを記録できるかどうか注目したい。
ヒューストン・ロケッツ
ロスター
HC:スティーブン・サイラス
戦術/強み/今シーズンの所感
昨シーズンは再建期で仕方ない状況ではあったが、守備の崩壊が止まることなくリーグワーストである116.4のディフェンシブレーティングを記録。連敗に連敗を重ねてしまった。
かと思いきやいきなりの連勝を重ねることもあり、全く読めないチームなのは若さ故なのだろうか。実際スコアリングが得意な選手がロスターに連なっており、リーグ2位のペースを誇るオフェンスは勢いそのままに勝ち切る強さがある。
スリーポイントを多投するチームでもあり、効率が低いために白星に繋がっていないが、確率を上げてこれれば、もう少し順位を上げられるかもしれない。
今オフは課題のディフェンスを強化するための補強をドラフトを通じて行っており、将来のスター候補であるスミスも3位で獲得することが出来た。
まだしばらくは育成の期間が続くだろうが、土台作りは着実に進行しているように思う。
課題/懸念点
再建チームであるために懸念はないが、スミスの活躍がサマーリーグで見えなかったのは引っかかっている。個人的な1位予想だったため期待しているのだが、不発に終わった場合は再びインサイドの補強は必要だろう。
ただサマーリーグはクリストファーがシュートの多くを放っていたため、まだその実態が見えていないだけだと思う。じっくりと成長を見ていきたいし、ロケッツのスピードにもフィットする走力も備えている。
注目選手
タイタイ・ワシントン
ロケッツが指名しなかった際は耳を疑ったが、トレードで加入した際は胸をなでおろした。
それほどまでに今のロケッツと相性が良い選手であり、ペースの速い展開でプレイメイカーとして機能してくれる選手だ。
まさにトランジションバスケの申し子と言える選手で、スピードに乗ったドライブからのワンハンドパスは必見。純然たるプレイメイカーがいないロケッツでは、オフェンスのリズムを作る選手となれるかもしれない。
他にもイーソンやスミスといった魅力的なドラフト生も控えている。ワシントン以外の若手選手も是非注目して欲しい。
メンフィス・グリズリーズ
ロスター
HC:テイラー・ジェンキンス
戦術/強み/今シーズンの所感
若いチームながらも攻守のバランスが非常によく、ネットレーティングは5.3とリーグ5位を記録している。上位に躍進したことも納得だろう。
現代バスケとクラシックバスケを融合させたようなチームで、リーグ1位のシュート数を放ちながら、スリーポイントアテンプト数は23位。ペイントエリアを中心にオフェンスを組み立てている。
それを可能にするのはガードながらリム周辺の得点が1位の圧倒的なスラッシャー、ジャモラントを擁しているからであるが、実はアダムズとのコンビが勝利に繋がっている。
一見するとインサイドプレイヤーのアダムズは相性が悪いように見えるが、レイアップのミスショットがアシストに繋がるケースが非常に多い。リバウンド数はリーグ1位を記録しており、セカンドチャンスを確実に決め切れていることがポイントだ。
そして少ないながらもベインやジャクソンJrがインサイドに収縮したスペースを活用し、スリーポイントで援護射撃を行うのがグリズリーズというチームの特長と言える。
ドラフトではシューターのラレイビアを指名しており、サマーリーグでも効率の良さを見せていたことから、ベインに次ぐ貴重なシューター枠として活躍してくれそうだ。
課題/懸念点
安定したチームなだけに不安材料はほとんどない。
モラントを中心としたチームに見えるかもしれないが、昨シーズンはモラント不在時でも連勝を重ねているだけにチームとしての総合力の高さは見せている。
一点挙げるとなると、インサイドを得点源とするだけに中を固められることを苦手としている。シューターが多いロスターではないため、アウトサイドの効率がインサイドでのプレーを可能にさせるだけの重要性を秘めている。逆に言うとアウトサイドショットが決まらないと攻撃に詰まってしまうチームと言える。
注目選手
デズモンド・ベイン
モラントがこのチームの生命線かもしれないが、人によってはベインこそが最重要人物というかもしれない。
ベインの長距離砲が失われれば主軸のインサイドプレーがしづらくなり、威力は大きく減少してしまうだろう。一人が欠けることにより、チーム全体のオフェンスに影響を及ぼしてしまうわけだ。
グリズリーズのオフェンスシステムを機能させるためにも、その不在は痛く、効率性の良さからも替えが効きにくい選手といえる。
ニューオーリンズ・ペリカンズ
ロスター
HC:ウィリー・グリーン
戦術/強み/今シーズンの所感
今シーズンのダークホースとなりそうなのが、このペリカンズだと考えている。
チーム的にはエースと考えているザイオンが不在でもプレーオフまで進み、若手の成長やマッカラムのフィットと好材料の多かった昨シーズンとなった。
ロスターには20得点以上を記録できる選手が4人も揃っており、控えにも15点をアベレージ出来る選手が控えている。オフェンシブレーティングはそうでもないのだが、非常に攻撃的なチームと言ってよいだろう。
インサイドのザイオン、ショートミドルのバランチュナス、ペリメーターのイングラム、アウトサイドのマッカラムとスコアラー全員が異なるエリアで得点でき、プレーエリアが被らない点も強みと言える。
一方でディフェンス力に課題があるチームだったが、ナンスJrの加入やヘイズの台頭、ジョーンズの守備能力が冴え渡り、その弱点も改善されつつある。
ザイオンも加わる本格始動の今シーズンは昨シーズンの経験を活かし、進化を遂げることが出来るのであれば、リーグ中位に留まるチームではなくなるかもしれない。
課題/懸念点
インサイドの人選は頭を悩ませるのではないかと考えている。
スタッツ上は安定しているバランチュナスだが、チームとの相性が不安視されており、その攻撃的なスタイルは守備力の低下を招いている。
現にヘイズを起用した際はインサイド守備に安定感が増す。流石にバランチュナス程の攻撃力はないのだが、チーム全体のことを考えるとバランスは勝る。
どちらの選手も一長一短で試合ごとに使い分けているのだが、将来的には統一したほうが良いのが個人的な意見だ。
チームとしての完成形が見えてきているだけにインサイドのメンバーが確定していないのは方向性に影響が少なからず生まれてしまうかもしれない。
注目選手
ザイオン・ウィリアムソン
今のペリカンズにザイオンが加わった場合の化学変化を楽しみにしているのが正直な意見で、NBA全体の中でも楽しみなチームの1つだ。
1年のブランクは大きいだろうが、怪我前の27得点でFG60%越えのスタッツはとてつもない。ザイオン一人の加入でチームの得点力が増すのはもちろん、ザイオンへと集中したマークは味方の得点力向上につながる。
圧倒的なオフェンスチームでリーグを席巻する可能性もあるだけに、ザイオンの支配力がどこまで通用するのかを見てみたい。
サンアントニオ・スパーズ
ロスター
HC:グレッグ・ポポビッチ
戦術/強み/今シーズンの所感
デリック・ホワイトのみならず、オフにはデジョンテ・マレーを放出したことで、スパーズは完全再建へと舵を切った。
アメリカ代表にも参加したジョンソンがチームを引っ張ることになるだろうが、第2,第3の選手がまだ現れているとはいえず、各選手の成長に期待をシーズンとなる。
スパーズの特性上、パスムーブを中心としたオフェンスを展開するため、一部の選手がスコアリングすることはないだろうが、ポテンシャル十分の選手は多数揃っている。その中の一部がオールスタークラスまで成長すれば、3年後くらいに面白いロスターに仕上がってるかもしれない。
獲得したドラフト生も皆タイプが異なっており、色んな新戦力を見れることは再建チームの醍醐味だろう。
完全素材型ながら機動力があるマルチディフェンダーのソーハン、スコアラーのウェスレイ、選手としてある程度完成しているブランナム。それぞれ注目したい。
課題 / 懸念点
再建チームのため、懸念点はない。
しかし、スパーズを担っていくであろうマレーを放出しただけに、スパーズファンの多くは恐らくガッカリしたはず。大鉈を振るったからには再建の成功を期待したいし、失敗は想像したくない。
注目選手
トレ・ジョーンズ
昨シーズンまでは同ポジションにエースのマレーがいたため、プレータイムはほとんど獲得できず、出場しても好成績は残せなかった。
しかし、サマーリーグでは2年連続20得点以上を記録しており、そのオフェンス力は折り紙付きだ。
エースがいなくなった今、今シーズンはプレータイムが格段に伸びるだろうし、一気に新エース格まで成長を遂げる可能性がある。
ボールを持って力を発揮するタイプなだけに、スパーズとの相性は疑問符が付くかもしれないが、是非その得点能力に期待をして欲しい選手だ。
以上、今回はウエスタン・カンファレンスの全ロスターを紹介してきた。
プレシーズンが開幕しているが、各チームの出来にも注目しつつ、醍醐味であるローテーションプレイヤーの台頭にも期待をしていきたい。
果たしてプレシーズンマッチから予想外の番狂わせがあるのかどうか、非常に楽しみだ。